有機栽培と特別栽培

有機栽培以外にも特別栽培という認証制度がある。両者の違いは?

有機栽培と特別栽培

改正JAS法で有機JASと共に特別栽培農産物という認証制度もできました。今回はこの特別栽培について、何故私が特別栽培ではなくて有機JASを選んだのか、制度上の欠点について指摘していきたいと思います。

特別栽培とは

まず、特別栽培とはどういうものを言うのか、有機JASと合わせて表にしてみました。

表示区分 栽培期間 天然系農薬 化学農薬 化学肥料
有機栽培農産物 3年以上 × ×
特別栽培農産物 減農薬栽培 栽培期間中
無農薬栽培 × ×
減化学肥料栽培
無化学肥料栽培 ×

△農作物が栽培されている地域の慣行栽培基準に対して50%以下に削減した量が認められている

上の表を見ていただいたら分かるように、過去に「減農薬栽培」とか「無農薬栽培」などと呼ばれていたものが、現在は全て特別栽培と呼ばれているのです。

というように、全部をひっくるめてしまったので、特別栽培の表示を見ただけでは、その農作物が一体どの項目に該当するのか分からないのです。これがまず問題です。

特別栽培の問題点

都道府県ごとに慣行栽培基準が異なる

有機JASは国からの認定なので、日本国内における栽培基準は一律です。一方、特別栽培は都道府県別に認証を受けます。特別栽培で、減農薬や減化学肥料の認証を得るには「慣行栽培基準に対して50%以下の使用」という条件を満たす必要があります。ここで何が問題になるかとういと、この「慣行栽培基準」が自治体によって違うのです。

例として、鳥取県、岡山県、島根県の「なす」の慣行基準を表にしました。

なすの慣行栽培基準
農作物 農薬の成分使用回数(回) 化学肥料(窒素成分kg/10a)
鳥取
島根
岡山
鳥取
島根
岡山
なす
29
27
23
38.2
75
55

化学肥料の基準は明らかに違いますが、あまり差が無いように見える農薬の使用回数にしても鳥取だと50%減で14.5回、岡山では同11.5回となります。つまり鳥取では14回分の農薬を散布しても特別栽培になりますが、岡山では特別栽培の認証を受けることはできません。

以上、自治体ごとに基準が異なることが問題であることは明白です。

第三者認証が行われない(自己申告制)

有機JASの場合、国の認可を受けた認定機関による栽培記録や圃場などの現場確認が1年に1回(以上)行われます。特別栽培の場合、都道府県が申請書類の確認・審査を行いますが、圃場などの現場確認は行いません。

鳥取県の場合は確認責任者の設置が義務づけられているのですが、確認責任者になる人物は生産者と親しい関係者である場合が多く、第三者とは言えないので、客観的な審査ができるかどうかが疑問視されます。

自治体による温度差

鳥取県の場合、割と特別栽培の認証に熱心なのですが、お隣の島根県を見ると、特別栽培と非常に良く似たエコロジー農産物という制度があり、むしろこちらの方に力を入れているように感じます。鳥取県は特別栽培用にシールまで発行していますが、島根県ではエコロジー農産物のシールがあるのに、特別栽培にはなかったりします。

総括

どうしても中途半端な制度という印象が拭えないのが特別栽培です。ということで、私自身は特別栽培という制度にあまり興味がありません。誤解されるとナンなので、念のために付け加えておきますが、特別栽培の制度批判をしましたが、特別栽培をされている生産者の方について、特に含むトコロがるわけではないので、あしからず。

2011.02.10