化学肥料について

有機JASでは農薬だけではなく、化学肥料の使用も禁止されている。化学肥料の問題点とは?

化学合成肥料について

農薬とは違い、化学肥料の危険性は直感的に理解しにくいと思います。ですが、有機JASでは化学肥料の使用は認められていません。なぜでしょう。

実は化学肥料は農薬以上に問題を抱えています。

化学肥料の問題点

土壌環境の破壊と農薬使用を促進

化学肥料は農作物への栄養供給のみを考えている(無機肥料である)ため、土壌の微生物にエサを供給しません。なので、化学肥料を投入した畑では土の中の微生物がどんどん少なくなって土が固くなってきます。また、このような貧弱な微生物層の畑で育つ農作物は(見かけは立派でも)病害虫に弱い作物になります。その結果、農薬を使用しなければまともな農作物がそだたなくなるという悪循環に陥ります。

環境負荷が高い

窒素系の化学肥料は窒素と水素を反応させてアンモニアを作ります。このアンモニア合成には大量の石油が必要になりますし、二酸化炭素が大量に発生します。また、電気代もかかります。

資源の枯渇

窒素系の肥料は化学合成によって生産できますが、リン酸とカリウムについては、リン鉱石、カリ鉱石が主原料で、リン鉱石は採掘資源の世界的な枯渇が問題になっています。また、両方の鉱石はほぼ100%を輸入に頼っています。

窒素過多の野菜(硝酸態窒素の問題1)

化学肥料は植物が吸収しやすいので、化学肥料で育った野菜には硝酸態窒素が多量に含まれます。硝酸態窒素は植物の成長には必要ですが動物には有害な成分です(酸素欠乏を引き起こします)。ほうれん草の「アク」などが代表的な例で、化学肥料で作られたほうれん草はアクが強くなる傾向があります。病院食にほうれん草が使用されないのはそのためです。

環境汚染(硝酸態窒素の問題2)

農作物が吸収しきれなかった硝酸態窒素は雨や雪解け水によって河川に流出し、地下水の汚染が深刻化しています(環境基準を超えた井戸の数が2000年度には165本だったのが、2005年度には651本に増加)。硝酸態窒素は安定性の高い物質なので、浄水場では除去できません。硝酸態窒素に対して、大人はかなり抵抗力がありますが、赤ちゃんや胎児には毒性が強く現れます。

※硝酸態窒素の問題は有機肥料でも過剰な施肥をすれば起こり得ます。ただし、有機肥料の場合は植物に吸収される前に微生物による分解行程が入るため、化学肥料よりも問題が起きにくいのです。

2011.02.03